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予想外 side S

 予想以上に早く書けたので、本日中にsideSも。

   『予想外』 side S 

 雲一つない快晴の空。
 可奈と肩を並べて歩くいつもの昼下がりに、二人は家電量販店のパソコンの前でパソコンを見比べていた。

 先日、可奈の父である水原警部に請われ、パソコン購入のアドバイスを依頼されたのだった。
 そのパソコンの購入目的を聞くと、仕事で使うための練習用に、とのこと。
 燈馬としては、その程度の使用であれば燈馬がもう普段使っていない旧式のノートパソコンを使ってもらえれば良いと思い、可奈にそれを差し出してみた。
 また、機械もあまり動かさなくなると壊れやすくなる。燈馬にとっても普段から水原家で使ってもらうことはメリットがあったのだが、可奈にそれを全力で拒否され、仕方なくパソコン売り場まで来たのだった。

 一通りパソコンのスペックを見比べてみるも、CPUはCorei5やAthlonⅡが主流でCeleronは数えるほどしかない。メモリーやHDDについても大部分は大差なく、後はPCの見た目の問題にも思えてくる。
 ただ、やはり使用目的がワードを少し触ってタイピングの練習をする程度なら、ここまで高性能である必要はないように思われる。
「あのノートパソコン、本当にもうほとんど使っていないので、もらっていただいても良かったのですが…」
 とりあえず一通り見た感想としては、このくらいしか出てこない。
「そういうわけにはいかないって。パソコンって…本当いい値段してるし…」
 燈馬は主にスペックを見比べていたのだが、可奈は値段を見比べている。その様子がなんとなく可笑しくて、燈馬は微かに笑う。
「確かに、パソコンは安いものではないですが、使っていないというのも事実ですし―――…」
「お客様、パソコンのご購入をご検討中ですか? 」
 燈馬の言葉を遮るように、愛想の良い声が二人の間に割って入ってくる。

―――こんな時の水原さんは…

 期待を込めた予想をして彼女を見ると、彼女は予想通り燈馬に隠れるように肩を近づけてくる。
 基本人見知りなどしない彼女が、無意識なのかどうかは知らないが燈馬を頼ってくれる。そのことが嬉しくて、そんな彼女がとても可愛く思えてしまう。決して口にはしないけれど。

 近付いた肩越しに伝わる彼女の緊張を感じ、とりあえず燈馬は店員に「あ、大丈夫です」と簡単に答える。
 しかし、店員も慣れているのか「そうですか? こちらの商品は…」と商品の説明を続ける。

 どう断ったものか…

 そう思いながら可奈を見ると、その眼は燈馬に縋るような眼差し。
 滅多に見せない彼女の弱さに鼓動が跳ねるのを感じる。それだけ自分が彼女の特別な存在なのだと思うと、自然と頬が緩みそうになる。
 だけどそれを彼女に気付かれないように、いつも通りの口調を心がける。
「いえ、本当に大丈夫なんで…」
 その一言で店員はようやく二人の前から離れていった。
 それと同時に、可奈の緊張がほぐれ大きく息を吐く気配を感じる。

 それがやっぱり嬉しかったりする。

 自分の前では緊張しない、ありのままの彼女でいてくれることが。
「水原さんでも緊張すること、あるんですね」
 嬉しさのまま、笑みがこぼれる。

 そして同時に感じ始める周囲の視線。
 彼女と出掛けると、必ずと言っても良いほどこの視線を感じる。
 男性が多い電気街などは特に。

 それは可奈に向けた好奇の視線。
 本人にはそれほど自覚はないようだが、彼女は目立つ。
 整った目鼻立ち、色素の薄い髪。すらりと伸びる長い手足に程よく引き締まった体。
 彼女は、黙ってじっとさえいればいわゆる美少女なのだ。
 そのため時々は今日みたいに「おい、あの子すごく可愛くないか?」といった声も聞こえてくる。

 ここには長居しない方がよさそうですね…

 そう感じて、燈馬は話の流れを元に戻す。
「それで先ほどの続きなのですが」
「うん? 」
 先ほどの話が何なのか、可奈があまりわかっていないのは感じたが、燈馬はそれを見て見ぬふりをして言葉を続ける。
「…あのノートパソコンはここに置いてある最新のスペックのものと比べると少々見劣りはしますが、練習に普段触る程度には支障はないと思いますよ」
「あぁ、うん。うん…でもなぁ…」
 普段は燈馬の拒否権なしに厄介事を持ち込んでくるが、彼女はこういうところが妙に律儀だ。
 正当な理由がなければもらいにくい彼女の性格はなんとなく理解している。
 だからこそ、どうしたものかと思考を逡巡させる。

 が。

 その間がまずかったのか、「どういうときにパソコンを使おうとお考えですか?」と再び、別の店員が近寄ってくる。
 可奈を見ると再びの困り顔。

 どうやら、この場ではゆっくり話も出来なさそうですね。

 そう思うと自然と溜息も出る。
 家電量販店特有の喧騒の中からは「横の男よりは俺の方が良くね?」「声かけてみようぜ」と変わらず彼女と自分に向けた言葉が聞こえてくる。

 先ほどの言葉に苛立ちと、この場から彼女を早く連れ出したい思いとがないまぜになって、その言動は店員に向く。
「僕がわかるので、大丈夫です」
「そうですか? どういうタイプの購入をご検討で? 」

 ここの店員は一度の断りでは接客をやめない教育でもあるのかと思うくらい先ほどと似たような反応を返され、またその言葉の中には心なしか、自分がたいしてパソコンの知識がないと踏んで話しかけられていると感じる。
 だったら、と燈馬は言葉を選ぶ。
「そうですね、とりあえずSSDの入ったノートパソコンはどれですか?」
「え…SSD?」
「はい、SSDです」
 にっこりと燈馬は笑って見せた。
 SSD、それはHDDに代わる次世代のフラッシュ型の記憶デバイス。最近は搭載しているパソコンも増えてきているとは聞いているものの、まだまだHDDがメインであることが多く、それゆえ知名度もまだまだ高くはない。
 この店員も、燈馬の読みが当たりSDDの存在自体を知らないようだった。
「なので、大丈夫です」
 とりあえず知識もあることは、伝えられたのだろう。店員は「そうですか」といそいそと二人の前から消えていった。

「ほら、今がチャンスだよ」
 どこからともなく聞こえてきた声に、燈馬は本日三度目の溜息をつく。
 さっさと、この店から出てしまいたい。二人だけの会話に第三者には入ってほしくない。
 なら、パソコンの購入という目的がなくなればいいわけで。
「やっぱり、パソコンは僕のを譲ります」
「で…でも!」
 そういった回答が出てくることは予測済み。
 だから彼女の腕を引き、耳元で囁く。
「いい加減、僕も店員が鬱陶しいんです。僕は、水原さんと話がしたいのに」
 そうすれば、可奈は真っ赤になって燈馬を見上げてくることも予想済み。
 予想通りの可愛い顔を自分に見せてくれたことが嬉しくて、周囲の目障りな目線の主たちのことは気にならなくなる。
「その代わり、僕の買い物に付き合ってください。ちょうどHDDをSDDに交換してみようと考えていたので」
 その流れのまま、燈馬は可奈の手を引いて歩く。

 きっと彼女は、真っ赤になって手を引かれるまま歩いていることは予想に難くない。
 だけど突然にその手を彼女に引かれ、鼻腔に彼女の香りを、首筋にはさらさらとした彼女の髪の感触を感じ、そして…

「ねぇ。それって期待していいってこと?」

 だけど、これは流石に予想外。
 何かしらの軽い仕返しくらいはあるとは思っていたけれど、想定外の言葉に胸の鼓動が高まるのは抑えられそうにない。

―――もちろん。好きですよ、水原さん。

 そう言ったら、彼女はどんな反応を返してくれるだろうか?
 また、真っ赤な顔をして僕だけにその可愛い顔を見せてくれますか?


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 今度は燈馬君目線でのお話でした。
 微妙に可奈が燈馬君に対して感じていたことと彼の感情は違ったということが書きたくなりまして、こんな感じになりました。
 それにしても、燈馬君予測ばっかりしているなぁ…(汗)

 まぁ、でもパソコン見ているだけで店員さんってすごくやってきますよね。
 この店員さんのやり取りは、私の友人と店員さんのやり取りを再現してみました。
 たぶんこんな感じだったかと。
 ちなみに友人は燈馬君ほど穏やかではないので、もっとそっけなくイライラしていましたが。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

Tag : Q.E.D...証明終了

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