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予想外 side K

 メインにQEDのSSと書いてあるのに、先に艦これを書いていましたが…
 やっと、QEDのSSです。


  『予想外 side K』 

 いつも通りの昼下がり。
 二人は少し離れた電気街にある大型の家電量販店でパソコンを見比べていた。
 目的は、水原家のパソコン。
 これまで特に水原家では必要とされていなかったが、この度、父の職場でもある警察で事務作業が電子化したことに伴い、水原家でも父の練習を兼ねてパソコンを購入することにしたのだ。
 ただ、水原家のだれもがパソコンの何を買えばいいのかがわからない。燈馬に購入のためのアドバイスをお願いしたところ、彼はこともなげに部屋の片隅から一つのノートパソコンを持ってきて「これでよかったらどうぞ」と、差し出したのだった。とりあえず、それを全力で拒否してパソコン売り場に来た。

 が。
 燈馬はパソコンをみた感想のように「あのノートパソコン、本当にもうほとんど使っていないので、もらっていただいても良かったのですが…」と呟く。
「そういうわけにはいかないって。パソコンって…本当いい値段してるし…」
 燈馬がパソコンの何を見比べていたのかは可奈には全く分からないが、少なくとも安いものではないことはわかる。
「確かに、パソコンは安いものではないですが、使っていないというのも事実ですし―――…」
「お客様、パソコンのご購入をご検討中ですか? 」
 可奈が小難しそうにパソコンを見比べていたせいだろうか、燈馬の言葉を遮って愛想の良い声が二人の間に割って入ってきた。
 それを見て、可奈は思わず一歩後ろに引いてしまう。

 基本、人見知りはしない性格だが、電気街の店員だけは苦手だった。何を言っているのかわからないし、向こうも必死で説明しているのがわかるから、それが申し訳なくなってくる。
 これまで何度も燈馬の買い物に付き合って電気街に来たことはあったが、声をかけられる度に可奈は思わず燈馬の後ろに隠れてしまっていた。

「あ、大丈夫です」
 そんなときは、いつも燈馬が間に入ってくれる。それが、少し嬉しくともこそばゆく感じ、無意識に笑みがこぼれる。
「そうですか? こちらの商品は…」
 燈馬のやんわりとした断りに、店員は慣れているのか、ものともせずに商品の説明を始めようとする。
「いえ、本当に大丈夫なんで…」
 燈馬は言葉を遮ると、同じ言葉を繰り返した。その表情は少しわかりにくいが、不機嫌なようにも見える。
 さすがに、二度目続けられた拒否の言葉に店員はなおも「もし何かわからないことがありましたら…」と言葉を続けながら、二人に距離を置き始めた。
 それを見て、可奈はやっとほっとしながら燈馬に話しかける。
「あー…緊張する」
「水原さんでも緊張すること、あるんですね」
 可奈が思わず呟いた言葉に、燈馬は端正な横顔のまま視線だけ可奈に向けて、微かに笑いながら言葉を返す。
 そんな些細な言葉さえもきちんと捉えてくれることが嬉しくて、だけどそれを知られるには少し気恥ずかしくて。思わず口から出るのはいつもの軽口。
「それ、どういう意味よ」
「そのままの意味です」
 いつも通りの会話に可奈の緊張も少しずつほぐれていき、身体が知らず知らずのうちに臨戦態勢になっていたことを知る。
「それで先ほどの続きなのですが」
「うん? 」

 何の話をしていたっけな…と思いながら燈馬の言葉を待つ。たぶん燈馬のことだから、そのあたりも踏まえて可奈に説明をしてくれることは十分に知っている。

「…あのノートパソコンはここに置いてある最新のスペックのものと比べると少々見劣りはしますが、練習に普段触る程度には支障はないと思いますよ」
「あぁ、うん。うん…でもなぁ…」

 いくら燈馬に常に厄介事を持ち込んでいるとはいえ、こういうことはさすがに気が引ける。
 何より金銭的なものが絡むものは特に。
 ただ、燈馬も「本当にもらってもらってよい」と思い可奈にこういう提案をしていることがわかるからこそ、どう返答したらよいかわからず躊躇ってしまう。

 そうやって言葉を考えていると「どういうときにパソコンを使おうとお考えですか?」と再び、別の店員が近寄ってきた。
 たぶん、可奈の顔がどのパソコンを購入しようか悩んでいるように見えたのだろう。

 いや、事実パソコンの購入を悩んでいるのは事実だが。
 店員に質問されても、どういうときに使えるのかが知りたいくらいだ。
「あ、いや…その……」
 そのまま質問するのは、さすがの可奈にも見当違いだということがわかる。
 結局は困ったときの燈馬まかせ。
 視線が合うと、燈馬は軽く溜息をつき、「仕方がないですね」と言わんばかりの表情。
「僕がわかるので、大丈夫です」
「そうですか? どういうタイプの購入をご検討で? 」
 店員は、最近少し伸びたとはいえ、可奈と大差ない身長の燈馬を子どもと侮ったのか質問を続ける。
「……」
 燈馬もそんな様子を感じ取ったのか彼の端正な顔は一瞬苛立ちを滲ませ、そして何かを考えるようにパソコンに視線を移す。そして、店員を一瞥した。
「そうですね、とりあえずSSDの入ったノートパソコンはどれですか?」
「え…SSD?」
「はい、SSDです」
 にっこりと燈馬は笑って見せた。なまじ顔が整っている分、彼が口の端だけで笑うと威圧感が生まれる。
「なので、大丈夫です」
 眼はまったく笑っていない。その眼には、可奈ですら時々射竦められるくらいの圧力が含まれている。
 店員は気圧されるままに「そうですか」といそいそと二人の前から消えていった。
 その後ろ姿を見送り、燈馬は少し溜息をついた。
「やっぱり、パソコンは僕のを譲ります」
「で…でも!」
 やっぱり高価なものだ、という意識が可奈から抜けない。そんな言葉が出てくるとすでに燈馬は予想していたように可奈の耳元に口を寄せ、
「いい加減、僕も店員が鬱陶しいんです。僕は、水原さんと話がしたいのに」
と、いつもより少し低音で、それでいて胸の奥がくすぐったくなるような心地良い声で囁いた。
 可奈が真っ赤になって燈馬を見ると、燈馬はクスリと笑い、そして今度は先ほどの言葉など何もなかったかのようにいつもの笑みを見せる。
「その代わり、僕の買い物に付き合ってください。ちょうどHDDをSDDに交換してみようと考えていたので」
 可奈の返事を待たずに、手を引かれる。
 それはとても自然な動きで。
 さっきの言葉が頭の中を反芻し、その言葉の意味を可奈につきつけようとする。
 その言葉は、話の腰を折られたことを苛立ったようにも、聞こえる。
 けれど、彼の声に含まれた熱はたぶん、それだけじゃない。
 だから…

 とてもじゃないけど―――…燈馬君の顔は見れそうにない。

 彼は、今どんな顔をしているのだろうか?たぶんいつも通りの飄々とした表情なんだろう。
 一方、自分はあまりにも気恥ずかしくて顔が真っ赤なことがなんとなくわかる。

 それが悔しくて。
 可奈は燈馬の手を引き返し、後ろから耳元に囁き返す。

 …――― ねぇ。それって期待していいってこと?

 特に言葉の意味は深く考えていないけど。
 ただ、彼の反応を楽しみたい。

 たぶん。
 それだけ。


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 ありがとうございました。
 タイトルにもありますが、こちらは可奈視点なので、もちろん燈馬視点もあります。
 ちびちび書き進めたいと思います。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

Tag : Q.E.D...証明終了

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