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幕間・観測-呼び名-

 こんにちは。久々の更新です。SS書いていなかったわけではないのですが、更新を滞らせましたorz
 ま、これから随所更新するので、ぱっと見わからなくなるはず(をい!)
 さてさて。
 先日発売されたQ.E.D.50巻の『観測』より。
 もう、例のシーンに絶叫です。燈馬君の○○○○ーーー!!!と叫んでしまいましたよ、はい。
 Twitter上で(笑)
 で、むくむく妄想を暴走させた結果です。
 多大なネタバレを含むのと、一部キャラの性格が完全捏造になっていますので、読まれる際はご注意くださいね。

  『幕間・観測-呼び名-』  

 燈馬君、燈馬さん、燈馬、トーマ、想、想兄ちゃん。
 彼を呼ぶ言葉はたくさんあって、つまりそれだけたくさんの人が彼の名前を呼んでいた。
 MIT時代の知り合いは、大抵トーマと呼んでいるし、高校のクラスメイトも燈馬か燈馬君と呼ぶことの方が多い。

 だから、その言葉を聞くたびに、私の胸はチクリ…と痛んでいた。
「ありがとう、ソウ」
 燈馬君の名前は燈馬想なんだから、別に誰かが「想」と呼んでいたって不思議ではない。
「サリー、後ろを見て」
 英語で人名を呼ぶときは、名の前にMrなりMsをつける、とは中学英語で習った。
 が、可奈が多くの外国人の人たちと出会って感じたのは、そういったものをつけるのは、硬い場面、初対面など親しくない関係で、親しい場合は特に何もつけずに呼び合うのだと言うこと。
 だから、別に燈馬君とサリーさんが「ソウ」「サリー」と呼び合うのは、MIT時代からの知り合いと考えれば、何ら不思議なことではない。
 何より彼女も燈馬君と同い年で、すでにMITを卒業した天才。
 天才は天才同士でしか分かり合えない苦労もあるだろうし、天才同士だからこそ通じ合うものもあるのだろう。

 頭では、いくらでも理解はできる。

 だけど、可奈の感情は全くもって納得するということを拒否していた。
「それでサリー、場所は?」
「……たぶんカザフスタン。だけどソウ……いいの?」
「僕は構わない。けど、水原さんはこれ以上は…」
「なーに言ってんのよ、燈馬君。体力ごとになったら二人じゃなんともできないでしょ!」
 たったこれだけの会話で、私と燈馬君の距離を思い知る。


 まだ知り合って2年も経たない。
 けど…それでも結構近くにいると感じていたのは……私だけだったのかな。


 たがが名前、されど名前。
 自分の名を呼ばれることがこれほどまでに感情を大きく左右するとは考えたこともなかった。
 たった一言、それだけでこれ以上にはないほどの壁を感じて、可奈は一人、ため息をついた。


 *******


 私とソウは、境遇が似ていた。

 彼はなんでも計算する天才。
 私はなんでも観測する天才。

 飛び級でMITに入った同い年の天才。

 便利屋としての自分を自覚しながらも、私はそれ以外に人の輪に入る方法を知らなかった。

 天才であるが故の孤独。
 それは仕方がないのだと思っていた。
 ソウに出会うまでは。

 彼の存在を知った時、その彼が土管から助けてくれた人と同一人物だと知った時、きっとソウも自分と同じ理由で人の研究を手伝いっているのだと感じ、ようやく私にも理解しあえる存在が出来たのだと思った。

 冬のあの日、私はようやく彼と話す機会を得た。
「お互い便利屋ですね」
 ソウの言葉を聞いて、私は泣きたくなった。

 ソウも、私と同じ気持ちを抱えている―――

 そう思うと、ようやく出会えたことへの切なさと嬉しさが込み上げてきて、この気持ちに確信がいった。
 きっと、これからもっと彼と話す機会が増えるだろう。
 きっと、一緒にいる時間も増えるだろう。
 きっと、彼と支え合えるだろう……

 理論屋の彼とそれを証明させる力を持つ私は、最高のパートナーになれると思う。
 それはなんて素敵な事だろう。

 私の心は希望に満ちていた。

 あの雪の降る寒い日。
 ソウがMIT首席卒業生としての名を残して大学を去ったことを知るまでは。

 同じ大学内にいるのだ。
 いつだってすぐに出会うことが出来る。
 そんな傲りが、彼を遠ざけてしまった。

 だから…もう二度とチャンスは逃さない。

 今回のトラブルも………両親のことも。
 可奈さんは自分の事を助手だと言い、ソウもそれを否定しなかった。
 それにソウが彼女と話すときの会話な私と話す時と違って、どこか他人行儀でもあるし、二人はお互いを「燈馬君」「水原さん」と呼んでいる。
 ファーストネームで呼び合っていないということは……たぶん、本当にまだその関係ではないのだろう。

 だったら、まだ私にもチャンスはあるはず。

 そう思ってホテルのラウンジに座り込み、ソウを待つ。
「僕も手伝うから」
 彼は私を拒まなかった。
 肩に触れられた、思っていたよりも大きな暖かな手。

 できれば、ずっと。
 この温もりを手放したくない。

 だから…まだ、チャンスがあると思っていいよね?


 *******


 一体、彼女はどういうつもりなんだろう。
 そんな思いが頭をよぎる。

 一年ほど前の水原さんなら確実に不機嫌になっていた。
 特になんでもない天文の話をしていただけで、割って入ってきたり、その後意地悪をしてきたり。


 正直それはそれで、自分のことを少しは特別に想ってくれているのだと嬉しかったりもした。


 だけど今回、サリーの肩を抱いていた件について水原さんは……何も言ってこない。
 アメリカで育った自分の感覚と違って、日本で育った水原さんの感覚としては、人と触れ合うことはとても特別なものだと認識している。

―――なのに何も言ってこないということは……

 侵食してくる不安。
 考えたって仕方がないと言い聞かせたところで思考を止めることもできず…燈馬は仕方なしに意識を無理やりにでも今回の解決に向ける。

 水原さんが力になりたいと言うのであれば、僕も出来る限り力になろう。

 今までの自分なら「もういい」「これ以上は頼れない」と言われれば、相手の領分を尊重して身を引いただろう。それ以上に踏み込んで、どうすれば良いのかもわからないから。
 他の人から見れば、いつも水原さんが僕に助けられているように見えるのかもしれないけれど…助けてもらっているのはいつも自分の方なのだ。
  
 だから自分もできるだけ、彼女の力になりたい。

 そう思って燈馬はよく知った番号を押す。
 ダークマターについて、自分よりもこのことをよく知るであろう人物から最新の情報を得るために。
 数コールの後よく知った声が聞こえてきて燈馬は用件を話す。が、すぐにその言葉の主は燈馬の感情を見抜いた。
「想兄ちゃん、なんか不機嫌じゃない?」
 この従兄弟はやけにこういう時、敏感で無邪気で遠慮知らずだ。本人が気付いていないことも、こうやって暴いていく。
 そう。
 自分は…たぶん彼女の対応に不満を抱いているのだ。
 嫉妬をしてほしい。…なんて幼い気持ちなんだと、自分の感情にため息をつきたくなる。
「気のせいじゃないか?」
 気付かされた気持ちを隠して言葉を続ける。今はそれよりも先にすることがあるから。
「そうかなー? ま、いいや。で、ダークマターだっけ?」
「うん。最新の情報について教えくれないか?」
「いいよー」
 森羅は言葉を続けた。



 *******


「で、あんたはなんでそんな不機嫌なのよ」
 事件が解決して数日後。
 いつものように学校帰りに燈馬の家に寄った可奈は、何の前ふりもなく突然言い放った。

 不機嫌の理由。

 そんなものは随分と前に森羅に見抜かれてから、嫌というほど自覚して、それでも普段通りを振る舞ってはずなのに、可奈はどこか確信を持ったようにそんなことを言ってくる。
 内心に燻り続けるもやもやとした感情。
 それを見抜かれたことに気まずさを感じながらも、どこか嬉しさを感じながら、燈馬はしらを切ることにした。
「水原さんの気のせいじゃないですか?」
 嬉しさはおくびにも出さす。
 普段通りの距離を保って、燈馬は言葉を返すと同時に……ここ数日感じていた疑問をついでと言わんばかりに口にする。
「それに……水原さんの方が最近不機嫌な気がしますが?」

 そう。
 事件が解決した時は、いつも通りだったはずだ。
 なのに…日に日に心なしか水原さんの表情が不機嫌になっていく気がしたのだ。
「そんなことない」
 そう言う水原さんの顔は…さっきと違って明らかに不機嫌。燈馬に指摘されて、もう隠すこともやめたみたいだった。

 何かしただろうか…

 戻ってきてから、ここ数日の行動を思い返すけど、特に思い当たることはない。
 唯一引っかかることは、やっぱりサリーが抱きついてきたことを見られたことぐらいだけれど、終わった時はいつも通りだったのだ。
 これが原因とは考えにくい。
 しかし……

 直感に頼るのは得意ではないが、燈馬はそれでも可奈の不機嫌の原因がサリーにあるように思えてならない。


「………もしかして、あのこと…怒ってます?」

 【あのこと】が何を差すかは燈馬自身だってわからない。
 こうなれば、ただの賭けで、彼女からその答えを引き出すしかない。
 今はまだ、理論を組み立てるための情報が足りない。

「怒ってないっ!」
「怒ってますよね? ………そんなに嫌でしたか?」
「っ………!!」

 水原さんの言葉が詰まった。
 どうやら何か……嫌なことをしたらしい。
 そうなれば思いつくのはやはり先日抱きつかれたところか。
「………すみません」
 いくら水原さんと自分がまだそのような関係でなくても、自分ならはっきり言って面白くない。
 それで彼女に嫌な思いをさせたというのであれば、出てくる言葉は謝罪の言葉しかない。
「べっ……別に呼び方なんてどうでも良いこと、気にするわけないじゃん!!」
 なのに返ってきた彼女の答えは、あまりにも予想外だった。

 呼び…方…?

 その言葉の指し示す所に気が付いて、燈馬は赤面して一瞬言葉を失い……そして自分でも珍しいことに声を上げて笑ってしまった。
「だから違うって―――…!!」

 ああ、なんて彼女は可愛いのだろう。
 そんなことは今まで気にも留めなかったこと。
 それがこんなにも大切な言葉なのだと知る。

 だから………

「はっ……あはは………す…すみません…………可奈」

 これで、許してもらえませんか?

「べっ…別に違うって言ってんじゃん!!」
「はい、そうですね」

 にっこりと笑って彼女の言葉を待つ。
 聡い彼女なら、きっとこの意図を理解してくれることを、僕は知っている。

「想の馬鹿っ!」

 ほら、ね。
 顔を真っ赤にさせて、それでもその可愛い声で期待に応えてくれる。
 どんな呼称であっても、それが貴女の名であるのなら、僕にとってはその事実が大切なのだけれど……

 それでもやっぱり、特別な人に呼ばれる名は、誰よりも特別ですね。

――――――可奈……

********************************************************

 ここまで、お読みいただきありがとうございました。
 サリーちゃん、腹黒くなってしまってごめんなさい。
 私の中ですごーく疑問だったんですよね。
 両親とご飯を食べに行ったのは前日の夜。で、燈馬君に抱き着いたのは翌日の朝。
 服も着替えているということは、いったんホテルの部屋に戻っているはず。なのにわざわざあんなわかりやすいロビーで落ち込んでいるってことは誰かに慰めてほしいわけで…それって燈馬君以外ありえないよね?可奈ちゃんにはちょっとよそよそしい様子だし…
 ………抱き着くまで確信犯か!!?この燈馬君の女たらしー!!とたどり着いた結果です。
 はい、ごめんなさい。
 こんな作品ですが、楽しんでいただけると幸いです。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

Tag : Q.E.D...証明終了

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