スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Whereabouts of wind 1

 こんばんは。
 今週末はコミトレですね^^
 残念ながら、所用により参戦はできませんが、ご参加される皆様はお気をつけてくださいね。
 音楽サークルめぐりしたいよう…

 さて、ちょっとQEDで長編のシリーズものを書いてみようと思いまして。以前から構想はあったのですが、そろそろ形にしていきたいと思います。
 ということで、今回はその1話目です。

  『目は口ほどに…』  
 大体において、水原可奈という人間は考えるよりも先に手が出る。
 それはもう脊髄反射と言っても差し支えないだろう。

 物事を認識するや否や、気が付けば体が動いているのだから仕方がない。

 なのに燈馬君は「それは本来反射で反応するものではありません」とか何とか面白くないことを言ってくる。
 だけどその燈馬君だって「どんなに冷静になろうともしても、その衝動を止めることはできない」って言っていたんだから一緒じゃないかと思うけど、彼の中では明確に何かが違うらしい。

 だから今日も「引ったくり!!」という言葉を聞いて犯人を認識した時には私の意識に関係なく走り出していたのだ。
 走り出してしまえば、今更止めることなんて出来やしない。

 目の前に迫りくる犯人と思しき人物が乗った自転車と自分との距離を目測。
 周囲に立つ人物の確認。
 幸いにして歩道上、車道ともに周囲に人影、車体の影なし。
 隣に立っていた燈馬君はすでに後方。

 そこまで確認して可奈は立ち止まると、重心をやや下げ深呼吸する。
 目標が射程圏内に入ったことを確認し、そして一気に勝負に出た。


 可奈の右足は自転車の前輪を見事に捕え、左足が籠を蹴り上げた直後、自転車は犯人もろとも横転していた。
 可奈は両足の流れのまま宙返りし、犯人の上に着地すると同時にその腕をひねり上げた。

 体の下からくぐもった声が聞こえてくる。
 が、その腕の力を弱めるつもりはない。

 通報を…そう思った時、背後から聞きなれた声が聞こえてくる。
「はい、咲坂公園近くの路上です。ひったくり犯を確保していますので早めにお願いします」
 振り返れば、少し怒ったような顔をした燈馬君の顔。通報しながら、ちゃんと放り投げた可奈の鞄を持って近づいてくる。
 言わずともばっちり補佐してくれるところが、燈馬君だ。
 可奈の絶対の信頼に応えてくれたことに心の中で感謝しながら可奈が笑うと、燈馬は呆れたようにため息を吐いたのだった。


「いいですか? 水原さん。いくら運動能力に自信があったとしても、自転車は危険な乗り物なんです。もし、水原さんにぶつかって打ち所が悪かったら、死ぬことだってあるんですよ!? ちゃんと考えてから動いてくださいっていつも言っていますよね?」
 事情聴取のため移動した警察署の一室で、可奈は燈馬君のお小言を聞く羽目になってしまった。
 いや、燈馬君の怒り顔を見たときから何となくそんな気はしていたが。
 それでも、お小言なんて聞いていて気持ちのいいものじゃない。
「でも死ななかったからいいじゃん。犯人だって無事捕まったんだし結果オーライってやつ?」
「オーライじゃありません!! 怪我してからでは遅いんですよ?」
 ちょっと怒っていた声音に、その瞳に心配の色が混じる。

 そんな瞳に自分は弱い。
 そうやって見つめられると、さすがにちょっと悪かったかな…という気持ちになってくる。


 ごめん。


 そう一言謝ろうとしたとき、突然に二人がいる部屋の扉が開く。
「貴女が犯人を捕まえてくれた女の子!?」 
 声の方を見れば、そこには40代前半と思われる綺麗な女性が浅間刑事とともに立っている。
「そうですが……」
「ありがとう! すごく助かったわ。貴女、お名前はなんて言うのかしら? あ、私は―――…」
 矢継早に繰り出される言葉に流石の可奈も面食らう。

 いや、ちょっ…待っ…

 ペースの速い言葉に、可奈は思わず引き気味になるが、残念ながら両手をその女性に握りしめられ、逃げることが出来そうにない。
「こんな可愛い子とは思わなかったわ。ねえ―――…」
「あの…すみませんが彼女も困っているのでいったん離れてもらえませんか?」
 逃げる隙を見つけられず対応に窮していた可奈に、燈馬が助け舟を出す。
 その言葉で、どうやらその女性もちょっと冷静になったらしい。「ごめんなさいね」と言って、可奈の手を離すと、鞄から名刺を取り出した。
「私、こういう者で、芸能事務所の社長をしているの。まあ芸能事務所と言っても小さなところだけど。ねえ貴女、芸能人になる気ない?」
「は?」
 その女性の言葉に反応したのは、可奈よりも燈馬の方が先だった。
「何を言って―――」
「あ、君もカッコイイから一緒でもいいのよ。まだ出来立ての事務所だからタレントが全然いなくって」
「遠慮します」
 燈馬君の声音は明らかに不機嫌。
 なのにその女性はそんなものを無視して話を続ける。
「そう? 残念ね。じゃあ貴女はどう? その可愛い顔に軽やかな身のこなしと引き締まったスタイル。かなりいい線いっていると思うの」
 可愛い、と言われて嫌な気はしない。
 それに芸能界に興味がないと言えば嘘になるが、それはあくまでも興味本位なものであって、芸能活動がしたいとかそういうものではない。
 そう、それは芸能人の小島さつきに会ってみたいとか、サインが欲しいとか、そういった程度のものだ。

 返答はだたの一択。
 だけど、どうお断りしたものか…その言葉が咄嗟に燈馬君ほど上手に見つからない。

「あ…あの……」
 ちらり…と横目に燈馬君の顔を見れば、あまり顔色の変わらない表情の中に不機嫌さと、そしてまるで拗ねたような瞳を見つけてしまい―――……
「受けてみてもいいかな…」
 気が付けば、そんな言葉を返していた。

 繰り返し言うが、大体において考えるよりも先に体が動いているのだ。
 だからこの言葉も、可奈が認識する前に放たれてしまった。
 その言葉を言うとどうなるか、そう考えるより先に。
 こう言うと、燈馬君がどんな反応をするかな~…なんて軽い気持ちで。
 だけどすぐに後悔することになる。


 ちらりと見た燈馬君の表情は…無表情に笑っていた。


 なんでこんな言葉を言ってしまったのだろう。
 なんで、燈馬君の忠告をちゃんと聞かなかったのだろう。
 なんで……ちゃんと考えて言葉を言わなかったのだろう。

 後悔しても遅い。
 燈馬君の瞳は、言葉以上に彼の心情を物語っていた…


*************************************************


 ちょっと暗い終わり方ですが、続く感じに終わらせてみました。
 予定としては全10話くらいと考えています。そしてなぜか6話がすでに完成しています。
 ぼちぼち書いて、夏までには完成させられるといいなあ、と思いながら頑張りたいと思いますので、また読んでいただけると幸いです。
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

Tag : Q.E.D...証明終了

コメント

コメントの投稿

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。