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提督が鎮守府に着任しました。

 とりあえず、艦これのSSでも。

  『提督が鎮守府に着任しました』  

 艦娘…それは、正体不明の深海棲艦から、この国を護る美しくも可憐な乙女たち。
 戦闘中は強い意志を込めた瞳で戦う彼女たちもまた、鎮守府に戻ればただの一人の乙女ともどる。

 そう、忘れてはならない。
 彼女たちは戦闘職種ながらもやはり女性であるということを。


「そういやさー…今度また新しい提督が着任するんだって?」
「そうなの~? 今度もまた手を落とす必要のある提督じゃないといいわね~」

 そこかしこで歴代の提督と新しい提督着任の話題が花開いている。
 とりあえず、今わかる青葉情報は
「今夜着任予定であること」
「まだ年若い提督であること」
この二点だった。

 皆、夜が来るのを待ち望んでいる。
 今この鎮守府に提督がいない状況は、いくらセクハラ提督でも寂しいことには変わりない。
 そう。
 彼女たちは指揮を執る人がいなければ、それはやはりただの無力な女性なのだ…

 夜。
 執務室には、前任提督の旗艦だった赤城が提督の到着を待ちかまえていた。
 鎮守府入り口に、車のライトが見えないかと、誰とはなしにそわそわと窓の外を伺う。
 夕食の時間も過ぎ、それぞれが各居室に戻るころ、待ち続けた一筋の光が門の外から近づいてくる。

「取材の一番乗りは、青葉なのです!」
 一人の艦娘はカメラを構え、車が鎮守府玄関前に停車するのを待ち構える。 

「こんな時間に来るってことは提督は夜戦好きですねっ」
 別の艦娘も、何やら別の期待に胸を膨らませているようで。
 にわか、艦娘の寮は騒がしくなる。

 そんなこととは、露知らず。
 鎮守府玄関前に車は横付けされ、中からは、小柄な人物が両手に段ボールを抱えて降り立った。

「ん~? なんだかとても小柄な気がしますが…青葉、さっそく行ってくるのです!」
 艦娘が止める間もなく、一人の少女が走り出した。

「確かに小せぇな。俺たちとそんな身長変わらないんじゃないか?」
「提督ではないのかしら~? 荷物を運ぶ手伝いの人とか~?」
 それに続くように、誰とはなくその後ろに続いて鎮守府へと向かった。

「この度、新たに舞鶴鎮守府に着任しました新米少佐です」
 その人物は、提督室に入り赤城を見つけると深々と頭を下げた。
「艦娘の指揮は初めて執ることになります。不慣れなもので何かとご迷惑をおかけすることもあるかと思いますがよろしくお願いいたします。」
「いえ…こちらこそよろしくお願いしますね、提督」
 赤城は、その提督の容姿と態度に戸惑いながらも笑顔で敬礼をする。
 提督も敬礼で答え、さっそく業務についての確認を始めた。

「こちらで保有する艦娘の数は?」
「現在31名です」
「内訳は?」
「正規空母2名、駆逐艦17名、軽巡洋艦5名、重巡洋艦3名、軽空母2名、戦艦1名、航空戦艦1名です」
「ふむ…やや火力不足が懸念されるところですね」
「その分、私たち空母部隊が制空権を確保しています」
 小柄といえど提督はやっぱり提督で、部隊の把握に努める姿が見られる。
「あの…よかったらこちらに艦娘の情報がまとめてありますので、こちらも確認してください」
「そんなことまでしてくれるのですか? ありがとうございます!」
 屈託なく提督は笑い、赤城の手を取って笑いかける。

「やっぱりセクハラ提督決定かしら~?」
「さわやかイケメン風ってやつじゃね? セクハラとは限らないよな…」
「でも顔が良く見えないクマ~」
「提督の声って、ちょっと高くない? 声変わりもしていないのかな?」
 執務室の扉がうっすらと開けられ、中の様子を伺う艦娘たちがその一部始終をのぞき見し、好き放題話していた。

「ところで…」
 我先にと、執務室の扉から中を伺う少女たちは、突然近づいてきた気配に身を固まらせる。
 扉から離れるにも、誰もが押し合いしているので、急には無理だった。
「こちらにいる艦娘たちの紹介はいつごろになりますか? あまりお待たせするのも申し訳ないのですが…」
 開かれた扉の前には、にっこりと笑う提督の笑顔と、驚きに目を見開く赤城の姿。

 同様に、艦娘たちも目を見開いた。
「初めまして。まだまだ新米少佐ですがよろしくお願いします」
 一番前で、艦娘たちの下敷きになった天龍に提督は手を伸ばす。
 天龍が握ったその手はとても柔らかく…

「お…おんなぁ!?」
 素っ頓狂な声を上げ、顔を真っ赤にして天龍は手を引っ込める。
 硬い軍服に身を包み、その髪も短くまとめられているが、その姿はどう見ても女性だった。
「はい、そうですが…?」
 提督は不思議そうに天龍を見返す。そして何かに気付いたように言葉を続ける。
「あのっ…もしかして、女性の提督では不安でしょうか?」
 その眼もまた、不安に揺らぐ。
「一応、海軍学校も卒業しましたし、たくさんの戦略も学んできました。男性の提督に比べると確かに体力では劣ってしまうかもしれませんが、戦術・戦略においては甲と引けを取りません!」

 一息に、提督は言葉を繋げる。それはこれまでに男性社会の中で蔑まれてきた提督自身への言葉。
 負けまいと、努力だけは人一倍してきたつもりだった。
 じわり…と提督の目に涙が浮かぶ。決して泣くことはないが。

「い…いや、女性ってのが珍しかっただけで、俺は別に不安とかじゃねーよ!」
 天龍は慌てて言葉を返す。
「あらあら~天龍ちゃん、泣かしちゃダメよ~」

「な…泣いてなんか…っ!」
「ばっ…龍田!」

 二人が同時に声を上げるが、提督はその先の言葉が続けられなかった。

「大丈夫よ~提督。誰もそんなことで不安になんか思ってないわ~」
 龍田の胸に抱きとめられ、よしよしと頭を撫でられる。
「あの~…一応、私提督なので、これでは立場がないと言いますか、何と言いますか…」
 あまりの行動に驚きすぎて、提督はろくな言葉が出てこない。
 ただ、先ほどの不安は微塵にも消え去っていったが。
「あら~、そうだったわね~ごめんなさい」
 何事もなかったかのように、龍田は提督から離れる。
 が、間をおかずして金剛が提督に飛び出していった。
「龍田ばかりずるいデース! 私も提督にハグするデース!」

 止める間もなく、金剛は提督に抱きついていた。
「あ…あの!!」
 顔を真っ赤にして金剛から提督は逃げようとする。が、体力の差は明白で、普段から訓練などで
戦っている彼女たちに提督がかなうはずがなかった。
 とうとう困って、赤城に視線をやるも
「大丈夫ですよ、提督。これが彼女たちなりの歓迎なのだと…思います」
と、微笑んでいる。
 違う、と言いたかったが赤城にはどうも伝わりそうにないと感じた提督は諦めて、なすがままになる。

「私は、女性の提督で良かったと思うなー。これまでの提督に、何度全爆撃機発艦させようかと思ったか」
 瑞鶴が言うと、それに応えるように
「私は手を落とそうかな~と思いましたよ」
と龍田が言葉を繋げる。
「わらわは、扇子で手を叩いてみたが、効果はなかったのぅ」
「前の提督は、とうとう叢雲に酸素魚雷くらわされていたわね」
 それに続く言葉も何やら物騒この上ない。

「あ…あの。これまでの提督は一体何を…?」
 明日の我が身かもしれない、と提督はごくりと喉を鳴らして艦娘たちの様子を伺う。

「提督は大丈夫ですよ、たぶん」
「そ、それはわかりません! 私も同じ失敗を繰り返す可能性はあります!」
 万が一のことを考えると知っておいた方が良いに違いない。
 なんせ歴代の提督が繰り返してきた過ち。
 まだまだ新米提督である自分は気が付かずに同じ過ちを犯す可能性の方が高い。
 そう思うと、瞳にはどうしても必死さが溢れだす。

 艦娘たちは、その様子に互いに目を見合わせる。
 たぶんも何も、この提督なら確実に大丈夫だし、むしろ艦娘たちが提督に逆のことをしてしまいそうだというか、すでにしてしまっているというか…

 ただ、それでは納得しなさそうな様子も見られ、とうとう赤城が代表して口を開いた。

「セクハラですよ」

 提督は目を見開き、顔を真っ赤にして頭を抱える。
「そ…そんな…。誇り高き我が軍にそんな不届き者がいたなんて…っ」
「歴代提督、そんな人結構多かったクマ―」
 空気を読まずに球磨が言うと、提督は益々混乱した表情を浮かべる。
「おいおい球磨、そんな追い打ちしてどうすんだよ。ま、まぁ、だから、とりあえず女性の提督で俺たちは嬉しいというか…うん。俺は嬉しいぜ!」
「大丈夫だ、私もその経験はないから、すべての提督がそうではないはずだ。たまに謎の戦術行動をとる提督がいたが…」
「あたしは酒を酌み交わせる提督が嬉しいね」
「私は夜戦してくれたら、どんな提督でも嬉しいけど」
「この夜戦馬鹿!!」

 笑い声が夜のしじまにこだまする。
 ひとしきり、提督と艦娘たちが笑い終えた後、赤城が居住まいを正して、提督に向き合った。


「提督! 鎮守府へようこそ。私たち艦娘一同、貴女の着任を歓迎いたします」

 夜は深々と。

 きっと明日の朝には陽に照らされた提督の笑顔が見られるのだろう。

 ―――さあ、暁の地平線に勝利を刻みましょう!



************************************************************

 はい。
 ここまで読んでいただけて、ありがとうございました。

 私が今まで見てきた提督は男性ばっかりだったので、女性の提督でも~…と思い立って書いてみました。

 最初の頃、叢雲が旗艦だったのですが、そんな彼女に突然「酸素魚雷を食らわせるわよっ!」と言われ、
続いて旗艦になった瑞鶴にも突然「爆撃されたいの?」だの「全機爆装、準備でき次第発艦! 目標、母港
執務室の提督、やっちゃって!」と言われたり…なんでだよう、と思っていたら YouTube で、セクハラ
発言集なるものを見つけ、ようやくいろいろと納得したのを思い出して書いてみました。

 提督セクハラしすぎだろ…と思いまして。
 楽しんでいただけると幸いです。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

Tag : 艦隊これくしょん

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